でも、ダイスがないと駄目な場合もあります。

　たとえば、ツマミが一体になったような、オリジナルな形状のネジを作りたい時は、ダイス加工が必要になります。

　望遠鏡の架台の回転軸などに寸切りネジを適当な長さに切って利用することは良く行われていま す。
 （寸切りネジ：頭の無い長いネジ。30cm〜１mくらいの長さで売っている。全ネジ、ズンギリなど とも呼ぶ）

　しかし寸切りネジに限らず、市販のオスネジは呼び寸法よりも外径が細目に出来ている場合が多いです。

　たとえば M10ではφ9.9くらいしか無い物が多く、これを内径 10mmのベアリングに入れると、ガタガタになってしまいます。

左は寸切りネジとベアリング。右の磨きシャフトと違って大きなガタがあります。

　そんな場合は、市販の磨きシャフトを使い、両端だけをネジにしたくなります。その場合もダイ ス加工が必要になります。
　
 （磨きシャフト：ホームセンターなどで売っているアルミや 真鍮の金属棒がそれ。外径精度が良い）

　このダイス加工は、うまく行かなくて投げ出してしまった人もいるのではないでしょうか。工作の方法を説いた本でもダイス加工について 触れたものは、あまり無いようです。

　ダイスのパッケージには棒の先端をちょっと面取りをするだけで、すぐにダイス加工が出来るような説明図が描かれていますが、実際に やってみると．．．

・ダイスが棒に食いつ かない

・なんとか食いついたとしても棒の方 が回ってしまって、先に進めない

・棒がつぶれるくらい万力で締め上げ て、強引に切ったとしても、ネジが曲がってる。

ダイスで失敗する例

 そこで、ＹＡＭＡＣＡ流ダイス加工の方法を ご紹介いたしましょう。

　例として、次のような部品を作るとします。

つくる部品

 φ10mmのシャフトの端に M10のネジを切るものです。このために、まずφ10mmのシャフトから、以下のよう なものを作ります。

　あとで切り捨てる部分ですのであまり精度は要りませんが、ダイスがすっぽり入るよう、 M10の谷径よりほんの少し細くします。

　旋盤が無ければ、シャフトをドリルで回しながらヤスリで削っても結構です。

　このダイスガイドの径は、ネジ加工のための寸法表に まとめてありますので、目安にしてください。

　その反対側は、”小判カット”と書いた、平らな面が対向した形状の部分をヤスリで作ります。

　ここは、万力でつかむ部分で、あとで切り捨てるので精度は不要です。

　ダイスを押さえつけながら回すと、棒にダイスが食いつき、あとは回していけば、ネジ加工が出来ます。

　ダイスは、裏表を間違えないことと、油を付けるのが注意点です。

ダイス加工の様子

　この方法ならば、ネジが傾く失敗も無く、M12くらいまでは出来ます。面倒なようですが、旋盤でネジを切るほうがよほど面倒です。 （段取りが）

ちょっ としたテクニック

・ダ イスを裏返す

　 ネジを切ったあと、ダイスを裏返してもう一度切ると、不完全ネジ部分が少なくなることがあります。
　

　 ｢タップには先、中、仕上げの３種類があるのに、なぜダイスは１種類なの？｣
　
　これは、ダ イスの径を微調整できるからです。すり割りになっていてそこにイモネジが付いています。

　 普段はあまりいじる必要はありませんが、ガタの無いネジを作るなら、ここで調整できます。

　 あまりに長いと、万力で端を押さえるのは辛いので、小判部分をシャフトの真ん中に加工します。

　 ここを全部落とさず、すこし残して、先端に面取りを付ければ、メスネジを入れるときのガイドにもなります。

”いろいろなアイデア”にも紹介しています。
 

　 以上のようにダイス加工は、タップよりも少し難しく感じます。切れ味が悪いダイスは工作を一層面倒にします。

　 色んなサイズが一緒になった、お買い得品の中には、残念ながら、まったく使い物にならないヒドイものもあります。

（私がその被害者だ！）