・・・このテーマの検討を有志で行った日々から既に9年の月日が経ってしまいました。
この間、福祉機器は進歩しているようですが、残念ながら天体望遠鏡に関しては、全体的な状況はあまり変っていないようです。
異常に重かったり、のぞきにくかったりする問題は放置され、健常者でも腰を痛めるほど。
この件に関して、実際のユーザーである吉藤雅一さんから貴重なレポートを頂きましたので掲載致します。
はじめまして。
HPの車いすでのぞきやすい望遠鏡云々をみてメールしました。
私、身体障害で車いすを使用していますが、子供のころからの天文好き(そのころは健常でした)で、30年以上のブランクを経て2年前にまた星を見はじめ
ま
した。
あくまで私の経験談ですが、車いすで観やすいようにいろいろ部品をつけかえたりしたので、参考になればと思いメールしました。
2年前に国際光器でポルタとSE120のセットを購入しました。
そのとき、店長さんと相談して、L型プレートと鏡筒を持ちやすいように革のベルトをつけて
もらいました。(私、足だけでなく手も不自由なもので)
それでも、いざ見るとなると目の高さを合わせるのが大変で窮屈な姿勢で覗いていました。
それで、三脚をエレベータつきのカメラ三脚に交換したところ、今までのことがうそみたいに覗きやすくなりました。
それと、アイピースはアイレリーフの長い
ものを使用しています。
最近ですが、45度正立プリズム＋双眼装置をつけたら、また一段と覗き易くなったような気
がします。
車いすの人と一口にいってもそれぞれの障害の関係で高さや大きさが異なるので、上記がすべてあてはまるとは思えませんが、次のことが言えるのではないか
と
考えています。
(1)フットレスト(車いすの人の足を置く板)が三脚にひっかかるので、三脚よりピラーが良い。
三脚の場合も開き止めのみにして、アイピースなどを置くお皿はは
ずしておく。
そんなものとおもわれるかもしれませんが、あのお皿はけっこう車いすにひっかかります。
(2)高さを調節できるもの(エレベータ付)がよい。
三脚でも高さは調節できますが、高くするとその分、三脚がひらいて邪魔になります。
(3)接眼部はいろいろあったほうがよい。
直視がよいか、90度または45度プリズムが見やすいかは人それぞれだと思います。
同じ車いすの何人かの友人に聞いたところ45度が一番覗きやすいという意見が多かったです。
ただ、リクライニング式で少し背もたれを寝かせたタイプの車い
すだと直視のほうが良いかもしれません。
(4)アイピースはアイレリーフが長くてレンズの大きいものが良いと思います。
(5)最後になりましたが、望遠鏡は屈折かシュミカセが良い、ニュートンはきびしいです。
私も観望会でほかの人の望遠鏡を覗かせてもらうことがありますが、
ニュートンはたまたま自分の目の高さに鏡筒が傾いているときに何とか見える程度で、多くの人に対応できないと思います。
シュミカセなら天頂ミラーの角度を
かえることで対応できると思います。
HPに載っていたユニトロンの屈折は赤道儀の軸を上に向けてT型経緯台みたいに使えると結構いけるかもしれません。
望遠鏡が横にずれるので、三脚との干渉
をすこし回避できるように思います。
ミードのドブを改造するとすれば、鏡筒の回転と接眼部に天頂ミラーをつけるなどすれば、多少の高さ調整ができると思います。
あと、付随運動のある方への対応ですが、軽い付随運動の方でしたら双眼装置が有効に思いま
す。
片目で覗こうと意識すればするほど付随運動が激しくなるの
で、アイレリーフの長いもので両目で覗けば付随運動も少しは治まるようにおもいます。
先日、友人に90度のプリズムでヘルパーさんに顔を押さえて覗いてもらっ
たら
「(月が)見えたけどつらい」
と言っていました。
双眼装置ではまだ試していませんが、双眼鏡は覗けるようでした。
アイデアの中に双眼鏡を使うと言うものがありましたが、あれほど仰々しいものではなくても、安価で似た方法があると思います。
試したわけではありません
、よく関西のおばちゃんが使っている自転車のハンドルつける傘たてを車いすのフレームにつけて、そこからステーなどでのばして目の高さまでもっていくとい
う
方法です。 参考：自転車用傘立て「さすべえ」
軽い双眼鏡やコルキットスピカぐらいならつくと思います。
これだとネジをゆるめるだけで別の車いすにつけること、また、ストレッチャータイプの
車いすなど、傘たてをつけるパイプがあるものなら何でも取り付け可能ですし,多少ぶれるかもしれませんが、試してみる価値はあると思います。
参考になれば幸いです。